English

器

白いものと青いものは歩いていた。

白いものが先。

青いものが少し後ろ。

ときどき並んだ。

道に、何か落ちていた。

白いものが止まった。

青いものも止まった。

白いものは近づいた。

器だった。

何も入っていなかった。

白いものは触った。

「あったかい」

青いものが隣に来た。

「触っていい?」

「いいよ」

青いものも触った。

「あったかいね」

「ね」

二人で器を持って歩いた。

しばらくすると、白いものが走りたくなった。

「持ってて」

「うん」

青いものが器を受け取った。

白いものは走った。

ぐるっと回って戻ってきた。

そのまま飛んだ。

青いものは器を持って、下から見ていた。

白いものが降りてきた。

「ただいま」

「おかえり」

白いものは器に触った。

まだあったかい。

青いものも触った。

まだあったかい。

今度は青いものが走った。

白いものが器を持った。

青いものは走った。

走った。

転んだ。

白いものが笑った。

青いものも笑った。

起き上がって戻ってきた。

二人で器に触った。

やっぱりあったかかった。

また歩いた。

葉っぱがあった。

白いものが拾った。

器の中に入れてみた。

そのまま少し歩いた。

白いものは器を見た。

葉っぱを取り出した。

「違う」

青いものが聞いた。

「違った?」

「うん」

葉っぱは風に飛んでいった。

白いものが先に歩いた。

青いものも歩いた。

器はどちらかが持っていた。

ときどき二人で持った。

白いものが止まった。

青いものは少し後ろで止まった。

地面に穴があった。

丸くなかった。

きれいでもなかった。

縁には土が見えていた。

白いものは近づいた。

しゃがんだ。

覗いた。

暗い。

向こうは見えない。

風も通ってこない。

白いものは指で土を少し掘った。

土が崩れた。

ずっと下で、ぱらぱら、音がした。

白いものは穴を見た。

「穴だ」

青いものが隣まで来た。

覗いた。

「穴だね」

二人で見た。

何も見えなかった。

青いものが聞いた。

「どうする?」

白いものは穴を見たまま答えた。

「まだ知らない」

「うん」

二人は穴のそばに座った。

真ん中に器を置いた。

白いものが触った。

青いものも触った。

あったかかった。

それから二人はまた歩いた。

空がだんだん暗くなった。

白いものが一度飛んだ。

青いものは下を歩いた。

白いものは降りてきた。

また二人で歩いた。

器も一緒だった。

夜になった。

星が出た。

白いものが器に触った。

青いものも触った。

あったかい。

二人は歩いた。

どこへ行くでもなく。

右へ。

左へ。

まっすぐ。

ときどき止まった。

また歩いた。

いつからだったのか、分からなかった。

白いものが気づくと、器の中にいた。

隣に青いものがいた。

白いものは器の縁を触った。

あったかい。

青いものも触った。

「あったかいね」

「ね」

真ん中に、

ドーナツがあった。

白いものが見た。

青いものも見た。

白いものがひとくち食べた。

青いものもひとくち食べた。

ドーナツの穴が、少し小さくなった。

もうひとくち。

また小さくなった。

二人で食べた。

穴はどんどん小さくなった。

誰も覗かなかった。

午前二時。

赤い流れ星が現れた。

夜空を走った。

途中でくるりと曲がった。

一回、大きな円を描いた。

そして消えた。

白いものと青いものは、器の中から見ていた。

白いものが、残ったドーナツをひとくち食べた。

青いものも食べた。

白いものは空を見た。

「今日、月ないね」

ドーナツが言った。

「ないね」

「お前がもうすぐないね」

月の声がした。

ドーナツ。

「あらま」